簡単に資金調達できる方法を知りたいんだが、「ファクタリング」と「債権担保融資(ABL)」の違いって何?
そんな風に疑問を思った会社経営者の方もおられるのではないでしょうか。
また、単に違いが気になるだけでなく
自社の置かれた状況ではどちらを利用するのが有利なのか知りたい
というようにお悩みの方もおられるかと思います。
結論先取りでお伝えしますと、資金調達をお急ぎの場合にはファクタリングを選ぶほうが良いです。
その理由を確認してまいりましょう。
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売掛債権担保融資とは
売掛債権担保融資とはその名の通り、売掛債権を担保として融資を受ける制度です。
英語ではAsset Based Lending(アセット・ベースド・レンディング)と呼ばれ、このイニシャルを略してABLとも呼ばれています。
融資の際によく登場する担保と言えば、不動産担保ですね。担保は物的保証と呼ばれますが、人的保障として保証人を立てることもあるかと思います。
売掛債権担保融資(ABL)では、御社の持つ売上・売掛金を担保とする資金調達手法ですので、不動産や保証人が用意できない状況でも融資を受けることが可能になります。
しかし対応企業の審査結果によっては保証人を必要とする場合もあるようです。
ファクタリングとは
一方で、ファクタリングとは売掛債権を売却・譲渡して資金を調達する方法です。
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがありますがその詳細についてはこちらをご確認ください。
ファクタリングと債権担保融資の共通点
ファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)の共通点はズバリ以下の点です。
- 売掛債権を利用して
- 資金を調達する
どちらの制度でも、御社が取引先に対して持っている売掛金を利用して資金調達を受けることになります。
両社とも売掛金さえあれば良いという点で、担保が用意できない中小企業や個人事業主にとってはピンチの時の助け舟になり得る制度ですね。
それでは次に、御社にとってどちらが有効な手段となり得るのか、両者の違いを確認しましょう。
ファクタリングと債権担保融資の違い【徹底比較】
売上債権担保融資では
①債権を
②担保にして
③融資を受けます。
ファクタリングでは
①債権を
②売却して
③資金調達をします。
これらの違いが実際にどのような利用上の差を生み出すのかを確認していきましょう。
資金調達にかかる時間の違い
売掛債権担保融資(ABL)を利用する場合、資金調達までに2週間から3週間といった期間を耐えきる必要があります。
時間がかかる理由は「融資」であるために審査が厳格であるからです。
ファクタリングを利用する場合、資金調達までにかかる時間は最短で即日。通常でも3日間~1週間程度と非常に短期間で現金の確保が可能です。
審査対象・内容・基準の違い
売掛債権担保融資(ABL)ではその審査対象が以下の2つになっています。
- 申し込み企業
- 売掛債権
これ自体はファクタリングでも同様なのですが、問題は審査内容です。
売掛債権担保融資では、もともとが融資ですので申し込み企業の返済能力が審査対象の中でも重要度が高いです。
売掛債権の性質・信用力も担保としての価値があるかどうかが見られますが、申し込み企業の経営状況や税金滞納などの事情によっては審査が通らず融資が下りない可能性があります。
一方、ファクタリングでは主に売掛債権の信用が重要で、自社よりも売掛先企業が審査対象となります。2社間ファクタリングでは申し込み企業の信頼性も重要になりますが最も重要なのは売掛債権です。
ファクタリングでは申し込み企業の経済状況が悪くても、売掛債権の内容次第ではより利用できる可能性が高いと言えます。
金利・手数料の違い
売掛債権担保融資(ABL)は融資のため金利が発生します。資金調達にかかるコストは5〜10%と言われているものの、実質年率15%という金融機関もありますので5%~15%を見込んでおくとよいでしょう。
ファクタリングでは金利ではなく手数料が発生します。
- 2社間ファクタリング では 10%~30%
- 3社間ファクタリングでは 1%~10%
という具合に取引形態によっても変わりますが、利用者割合が多いと思われる2社間ファクタリングではABLよりも資金調達コストがかかることになりそうです。
売掛債権の債務不履行時の違い
取引先の倒産などによって売掛債権が債務不履行に陥ってしまった場合について考えてみましょう。
売掛債権担保融資(ABL)では、該当の売掛債権を担保として提供しているだけですので、その担保価値がなくなったとしても申し込み企業が残債務を完済しなければならないことに変わりはありません。
この点ファクタリングにおいては事情が異なります。
債権譲渡が行われた後には、元の債権者は債務不履行の責任を負わないとする償還請求権なし(ノンリコース)の契約を結ぶことが多く、万一の場合はファクタリング事業者が損をすることになります。
つまり一度債権を譲渡してしまえば取引先の倒産リスクを心配する必要はなくなるため、中にはこの目的でファクタリングを利用するケースもあるほどです。
保証人や担保の有無の違い
売掛債権以外の保証人や担保が必要となるかについては、両者ともに不要であることが普通です。
しかし、債権担保融資では審査結果によっては保証人が求められることがあるというのは前述の通りです。
一方ファクタリングでは保証人や担保を求められることはありません。もし要求された場合は悪徳業者であることを疑うべきですので要注意です。
債権譲渡登記の必要性の違い
売掛債権を譲渡する場合、第三者に対して債権の譲渡を受けた旨を主張するために対抗要件なるものが必要になります。
対抗要件としては確定日付のある債務者への通知または承諾の他に、債権譲渡登記という登記制度が用意されました。
売掛債権担保融資(ABL)ではこの登記が必要になることが通常です。
債権担保融資では担保だから譲渡ではないのではと思うかもしれませんが、担保からの資金回収が必要になった際に対抗要件を具備しておく必要があるため登記がなされます。
金融機関が不動産に担保を設定した際には必ず抵当権などの不動産登記をするのと同じですね。
ファクタリングにおいては2社間取引の場合に債権譲渡登記がなされることがありますが、登記を不要としている業者も存在します。
個人事業主の利用可否の違い
個人事業主の利用ができるかどうかについては前述の債権譲渡登記との兼ね合いが大きいです。
というのも、債権譲渡登記は法人を対象にした制度であるため個人事業主は利用できません。
そのため売掛債権担保融資(ABL)では個人事業主が利用できる可能性が限られているのが現状です。
債務者へ通知することが問題なければ、確定日付ある通知をする、または承諾を取り付けることで利用できる場合もあるでしょう。
ファクタリングでは一般的に個人事業主でも利用できるとされています。
しかし仮に債権譲渡登記が必須であれば利用できないことになります。その場合には3社間ファクタリングを利用するか、または登記を不要とする業者を選ぶしかありません。
売掛債権担保融資(ABL)であれ、ファクタリングであれ、金融機関・業者側が柔軟に対応してくれる必要があるということです。
両制度の違いまとめ表
債権担保融資 |
ファクタリング
|
|
期間 | 2週間〜3週間 |
即日〜1週間
|
審査対象 | 申し込み企業メイン |
売掛債権メイン
|
金利・手数料 | 5〜15% | 10〜30% |
債務不履行時の返済 | 返済必要 | 返済不要 |
債権譲渡登記 | 原則的に必要 | 業者による |
個人事業主 | 原則的に難しい | 利用可能だが業者による |
債権担保融資がファクタリングに勝る点
債権担保融資(ABL)がファクタリングに勝っているポイントはズバリ
資金調達コストの低さです。
年ベースで考えた金利が5%~15%と低く、長期目線をもって経営状況を立て直すのに非常に有利です。
その分融資が下りるまでの審査に時間がかかるため、同様の期間を待つ余裕があるのでその他の融資を検討する余地も出てくるかと思います。
その場合には債権担保融資(ABL)以外の資金調達方法との比較も必要になります。
ファクタリングが債権担保融資に勝る点
ファクタリングが債権担保融資(ABL)に勝っているポイントはズバリ
資金調達までの時間の短さです。
最短で即日での資金調達ができる事業資金調達方法はそうそうありません。
即日から3日以内での資金調達が必要な状況に陥っている場合には多少手数料が高くなっても背に腹は代えられないでしょう。
会社の倒産危機にある場合など、資金調達可能という選択肢が存在するだけでもありがたいものです。
ちなみに、即日で現金化するためには迅速に書類が揃えられる必要がありますので要確認です。
まとめ
- 時間に余裕があれば債権担保融資(ABL)の方が金利が安い
- その代わり時間がかかるため他の融資との検討も価値あり
- ファクタリングは手数料が高い
- 緊急に資金調達が必要ならファクタリングを利用すべき
債権担保融資(ABL)とファクタリングの細かな違いを解説してきましたが、最も重要なことはファクタリングの特徴はあくまで迅速な資金調達にあるという点です。
御社の資金繰りの緊急度によって適切な事業資金調達を選択していただけたらと思います。