資金繰りに苦しむ中小企業の経営者にとって強い味方となり得るファクタリングですが、利用するに当たってのリスクや危険性というものも存在します。
中にはファクタリングが原因で倒産危機に陥ってしまった方もいるほどです。
会社経営では従業員から取引先顧客まで多くの人が関わり、倒産ともなればその被害は計り知れません。
ファクタリングがきっかけで酷い目にあったということのないように、ファクタリングに潜むリスクと危険性をしっかり理解しておきましょう。
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ファクタリングのリスク
ファクタリングを利用するに当たってリスクとなり得るものを挙げてみました。
- 高い手数料
- 取引先に経営悪化がバレる可能性
- 売掛先が倒産した場合のリスク
- 悪徳業者にひっかかる可能性
- 債権譲渡登記はリスク?
それでは一つ一つ内容を確認していきましょう。
リスク1:高い手数料
ファクタリングのリスクとして考えられるものにその高い手数料があります。
銀行融資などに比べて非常に短期間で資金を調達できるファクタリングですが、それ故に融資の金利と比べてファクタリング手数料は高く設定されています。
金利・利息ではないために出資法の規制も受けないファクタリング手数料ですが、本来満額もらえるはずの売掛金を減額している(=資産を目減りさせている)ことを忘れてはいけません。
ファクタリングが本当に必要な緊急時の使用に留めておき、むやみやたらとファクタリングに頼ることはお勧めできません。
リスク2:取引先に経営悪化がバレる可能性
実は3社間ファクタリングと呼ばれる取引形態であれば手数料を安く抑えることができます。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングについての詳細はこちらで確認してください。
3社間取引では、取引先に債権を譲渡する旨の通知・承諾を必要としているが故に手数料が安く設定されています。
しかし取引先に経営悪化で資金繰りが苦しいことを知られてしまうため、場合によっては取引先からの信頼を失うことにもなりかねない諸刃の剣です。
2社間ファクタリングでは取引先に連絡はしないために基本的にバレるリスクは少ないですが、手数料が高くなってしまうのは前述の通りです。
リスク3:売掛先が倒産した場合のリスク
ファクタリングを利用して現金の調達に成功したとして、売掛金の支払期日の前に売掛先企業(取引先)が倒産してしまった場合はどうなるでしょうか。
もしファクタリング事業者から「売掛先が倒産したからおたくが代わりに支払ってください」と言われてしまうとしたらリスクと言えますね。
これに関しては、実はファクタリングには以下の2種類が存在します。
- 償還請求権あり・・・売掛先の倒産時に代わりに支払う必要あり
- 償還請求権なし・・・売掛先の倒産時に代わりに支払う必要なし
償還請求権がない契約は、ノンリコース契約とも呼ばれています。
ノンリコース(nonrecourse)の意味は責任が遡及(そきゅう)しないことを指すので、売掛金が債務不履行の状態に陥ったとしてもファクタリング会社から遡って(さかのぼって)請求されることはありません。
ファクタリングは一般的に償還請求権が設定されてないノンリコース契約だとされていますが、この設定の有り無しは業者に寄ります。
契約前に償還請求権の有り無しは確認するように注意してください。
リスク4:悪徳業者にひっかかる可能性
ファクタリングのリスクの中でも最も心配すべきなのが悪徳業者です。
ファクタリングは貸金業ではないために許認可を取得する必要がありません。それはつまり参入障壁が低いことを意味します。
悪徳業者や詐欺業者などがファクタリング事業者を名乗っていることもあり、ここに引っかかってしまった場合には最悪倒産の危機に直面することもあります。
悪徳・詐欺業者の手口は大きく分けて
- ファクタリング事業を入口として後に貸し付けへ変わる
- ファクタリングを名乗るが実質は債権担保での融資
という2種類が存在しており、いずれにせよ最終的には高額な利子での貸し付けが行われます。
少しでも不審な点があれば用心すべきですが、焦って資金調達している時にそんなことも言ってられないのが実情です。
信頼できるファクタリング事業者を紹介してもらうのが最も安全だと言えます。
リスク5:債権譲渡登記はリスクじゃない?
最後にオマケのような項目ですが、債権譲渡登記がリスクとなり得るのかを検討しておきたいと思います。
2社間ファクタリングでは、債務者や第三者への対抗要件を具備するために債権譲渡の登記が必要となることがあります。
この登記をしたことによって、債務者である売掛先に債権譲渡をしたことがバレてしまうリスクがあるということを書いているウェブサイトがあります。
更に、これに対しての反論として債権譲渡登記を完了した後に取得することができる「登記事項概要証明書」にはどの債権が譲渡されたかまでは見ることができないからリスクにはならないという意見もあります。
確かに「登記事項概要証明書」には限定された情報しか記載されませんが、全ての事項が記載されている「登記事項証明書」を債務者であれば取得することができるのでバレる可能性がないわけではありません。
ただし、取引先が突然わざわざ債権が譲渡されたかの登記を調べることもないでしょうから、リスクと言うほどのものではないかと考えます。
ファクタリングの危険性
ファクタリングのリスクについて理解いただけたところで、次はファクタリング利用の危険性についても確認していきましょう。
危険性1:資金繰りが改善しない危険性
ファクタリングは迅速な資金調達を可能とする代わりに、自社が持っている資産を目減りさせる行為とお伝えしました。
- ビジネスチャンスが到来したのに資金が足りない
- 売上の入金が来月で従業員へ今月の給料が払えない
などの一時的な資金需要のために利用するには非常に使い勝手がいいですが、ファクタリング利用によって資金繰りが根本的に改善することはありません。
翌月以降の売り上げが立たないままでファクタリングを利用していてはいつまでも自転車操業から抜け出すことができませんのでキャッシュフローを改善していく検討が必要です。
ファクタリング事業者としても、将来の資金繰りが改善される予定があるかはチェックしており、最悪の場合ファクタリング会社からもブラック認定を受けてしまいかねません。
ファクタリングはあくまで一時的な資金ショートによる倒産危機や従業員への給料未払いなどを回避するために使い、経営状況を立て直す施策を講じていくことが求められます。
危険性2:詐欺行為をする側になることも
ファクタリングを利用する会社の中には、本当に追い詰められた状況に置かれている経営者も存在します。
先ほど詐欺・悪徳業者について触れましたが、下手をするとファクタリングを利用する側が詐欺行為を働いてしまう危険性もあります。
具体的には
- 存在しない架空の売掛債権を書類偽造で作り出す
- 重要な内容を隠して審査を通そうとする
といったことが実際に起きており、切羽詰まった状況がゆえに悪気無く行ってしまっていることが多いです。
置かれた状況が状況だけに理解はできるものの、詐欺行為として立派な犯罪が成立してしまいます。
会社の存続危機にあってもそういった行為にだけは手を出さないようにしたいものです。
まとめ
ファクタリングのリスクと危険性をおさらいすると
- 高い手数料
- 取引先に経営悪化がバレる可能性
- 売掛先が倒産した場合のリスク
- 悪徳業者にひっかかる可能性
- 債権譲渡登記は大したリスクではない
- 資金繰りが改善しない危険性
- 詐欺行為を働いてしまう危険性
といったことを一緒に見てきました。
ファクタリングにはこれらに負けないくらいのメリットもあるわけですが、リスクとのバランスを見て上手に利用することが重要です。
金利の低い銀行融資で1ヶ月待った挙句に審査に落ちるのもリスクですし、リスク・危険性はどの手段にも付きまといます。
必要な状況で必要な手段を上手く利用して会社経営の危機を乗り越えていきましょう。